特殊清掃 その③

 前回の記事では事例に基づいて、作業を
①特殊清掃
②生活用品・家財道具の撤去処分(遺品整理)
③消臭・消毒施工
に分けて順番に説明させていただきました。

 その作業手順をふまえて、ここでは「特殊清掃」の何があいまいで、どこに混乱をきたす要因があるのか考えてみたいと思います。

 結論的には業者側の「特殊清掃」についての定義の問題であると思いますが、その内容を詳しくみてみたいと思います。

 弊社では特殊清掃を「居室内死亡における死亡場所の清掃・消毒、および体液等付着物の回収処分」と定義し、 ①の作業のみをさしますが、どちらかというと業界的には少数派かもしれません。

 と申しますのは事例のような孤独死案件の場合、多くの場合は強い腐乱臭をともない、①の作業と③の作業は 作業上切り離せない、区分が難しい案件も多く存在する為、①と③を合わせて「特殊清掃」と呼ぶ業者さんは 多いように思われます。
 お部屋の状態(主に衛生状態)によっては、①、②、③の全てを含めて「特殊清掃」と呼ぶ場合も あるようです。
 また、「お部屋の状態」について焦点をあてて、特に「居室内死亡」の案件に特定せず、 「衛生状態が著しく悪い場所をクリーニング(および消臭・消毒)すること」を「特殊清掃」と呼ぶ 場合は多いです。
 例えば、トイレが糞尿にまみれていたり、ゴミ屋敷内に尿入りペットボトルが散乱していたり・・・ そのような現場は、確かに「普通の清掃」では済みません。消臭・消毒も必要な作業となってくると思いますので 「特殊(な)清掃」と業者さんが呼称するのもうなづけます。 業界的には「火災現場」や「水害後」の清掃・消毒なども「特殊清掃」と呼称しているので、「衛生状態が著しく悪い場所を清掃(および消毒・消臭)すること」を「特殊清掃」と呼ぶことの方が一般的なのかなと思います。しかしながら、「状態」を定義の基準としてしまうと、どこからどこまでが「普通の清掃」で、どこからが「特殊清掃」になるのか非常に感覚的で、常にあいまいさがつきまとう(=お客様にわかりにくい)ことになってしまう為、弊社はわかりやすさを優先して、あえて「居室内死亡」という「現象」を定義の基準においております。もちろん弊社の定義のほうが少数派なのかなという状況は認識しておりますので、お見積りなどの際はお客様(ご遺族様、大家さん、不動産屋さん、同業者さん、その他)のご認識に合わせてご説明させていただきますのでご安心ください。
 さらには、③消臭・消毒施工の後の、フローリングの貼替、クロス貼り等の原状回復工事(リフォーム) まで含めて、「特殊清掃」としてお見積りする業者さんもお見受けしたこともあります。ここまでくるとさすがに呼称と作業内容の間に違和感を感じざるをえませんが・・・

 つまり同じ「特殊清掃」という用語を使用していたとしても、それが指し示す作業範囲は各業者さんによって 違いがあるということです。
 A社さんのお見積りは5万円なのに、B社さんは30万円、C社さんは60万円などということは、 当然ありうるということになります。 (この場合A社さんは①のみ、B社さんは①、②、③すべての作業を、C社さんは①、②、③さらにリフォーム工事まで含んだお見積りを提出していると推定できます。 同じ作業でも各業者さん間で、定価の違いは多少なりともあるとは思いますが・・・)

 こうなってくると、お見積りを比較検討しているご親族様のほうでも、どこまでやったらよいのか、 どこに頼んだらよいのか、混乱が深まるばかりではないかと思います・・・

 こうした混乱を避けるための方法はただ一つ、お見積り内容について業者さんによく確認することしかありません。

 お見積りには、どのような作業まで含まれているのか、依頼している内容とお見積り内容は符合しているのか、どの作業にどれくらいの費用が見込まれているのか、作業終了後はどのような状態になっていて、 このあと他にしなければならないことがあるのか等々、しっかり確認してください。
 ご質問に対し明確に、丁寧に、わかりやすく回答していただける業者さんであれば、間違いはないのではないかなと思います。できれば作業工程とそれに対応する費用が明確になっている業者さんが良いのではないかと思います。結局のところ、各業者さん側に「定義や見解の違い」があったとしても、「説明不足」ということがなくなれば、ほとんどの問題は解決されるのではないかなと思います。

 たいていのご依頼者様は初めてのご経験ですし、精神的につらい状況にあるご依頼者様もいらっしゃる と思いますが、二度手間、三度手間になってしまったり、かけなくても良い費用をかけてしまったりすることのないように、くれぐれも焦ってよくわからないまま性急な判断を下さないようにご注意ください。

 今回の記事はここまでにしたいと思います。
長文かつ拙い文章をここまでお読みいただきましてありがとうございました。
参考にしていただければ幸いです。